役員・経営層向け視座
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コース概要
部長や部門長としての経験を積んだ方が、執行役員や取締役に就任した瞬間、法律の目から見た立場は根底から変わります。従業員としての雇用契約は、会社との委任契約に切り替わり、善管注意義務・忠実義務という会社法上の責任が個人に生まれます。本コースは、コーポレートガバナンス・コードの原則解説や資本コスト経営の計算式、取締役会の事務局実務といった制度知識ではなく、「取締役席に座る本人が、個人として何を負い、どう判断すればよいか」に的を絞って扱います。善管注意義務と経営判断の原則、株主代表訴訟とD&O保険、取締役会の実効性、指名委員会・報酬委員会を運営する側の実務、社外取締役の就任実務、有事の意思決定、長期視点とグループガバナンスまでを8レッスンで学び、監督する側としての判断軸を身につけます。
学習の流れ
レッスン1では、従業員と取締役の法的地位の違い、機関設計の3形態、部長から役員への視座の転換を扱い、本コース全体の土台を作ります。レッスン2と3は「取締役の法的責任」の二本柱として、善管注意義務・忠実義務の中身と、経営判断の原則・株主代表訴訟・D&O保険を扱います。レッスン4と5は「取締役会という会議体をどう機能させるか」をテーマに、取締役会の実効性評価と、指名委員会・報酬委員会を運営する側の実務を扱います。レッスン6は、本コースの中核メッセージの1つである社外取締役という立場そのものに焦点を当て、就任実務から独立性の保ち方までを扱います。レッスン7と8は「有事と長期」の視点で、不祥事・買収提案への対応、そして長期視点の意思決定とグループガバナンス、役員のキャリアと継続を扱い、コース全体を締めくくります。前半で法的責任の土台を固め、後半で取締役会という組織そのものと、有事・長期という2つの応用局面へと展開する設計です。
このコースで学べること
- ✓ 従業員と取締役の法的地位の違い、機関設計3形態の違いを理解し、自社の統治構造を説明できる
- ✓ 会社法上の善管注意義務・忠実義務の内容を理解し、取締役として負う責任の範囲を説明できる
- ✓ 経営判断の原則の考え方を理解し、「守られる判断」にするための手続を実践できる
- ✓ 株主代表訴訟・D&O保険・会社補償契約の仕組みを理解し、有事に備えた準備ができる
- ✓ 取締役会の実効性評価の設計・運用ができ、議論の質を高める視点を持てる
- ✓ 指名委員会・報酬委員会を運営する側の実務(CEO後継者計画・報酬水準審査)を理解できる
- ✓ 社外取締役として、または社外取締役を迎える側として、独立性を保ちながら建設的な対話を設計できる
- ✓ 有事の取締役会・グループガバナンス・長期視点の意思決定について、取締役としての判断軸を持てる
対象者
執行役員・取締役に就任した方(就任直後〜3年目)、部長・本部長として役員登用が視野に入っている方、社外取締役・監査等委員への就任を打診されている方、経営企画・法務から役員をサポートする立場で「役員が何を負っているか」を理解したい方
講師紹介
蓮見 佐和子(はすみ さわこ)
社外取締役/元 上場企業取締役CFO
大手総合商社に入社し、事業投資部門で8年間、資源・インフラ分野の投資案件に携わる。投資先子会社のCFOを4年務めた後、本体に戻り執行役員経営企画担当を3年経験。その後、東証プライム市場上場メーカーへ転じ、取締役CFOを6年務める。財務戦略・資本政策・投資家対応の最前線に立つ中で、経営陣として負う法的責任の重さと、取締役会という会議体の質が企業の未来を左右する現実を痛感する。退任後は、上場企業2社の社外取締役、1社の監査等委員を務めながら、大学院でコーポレートガバナンスを講じている。スタンス:「役員になるとは、執行する人から監督もする人になること」「善管注意義務は制約ではなく防具——手続を踏んだ判断は守られる」「知らなかったでは免責されない——監視義務は能動的な義務」「取締役会の価値は決議数ではなく議論の質で決まる」「社外取締役は敵ではなく、最も安価な保険である」「長期視点は勝手には生まれない——四半期の圧力に抗う仕組みを持つ」
受講される方へのメッセージ
「取締役に就任した初日、私は「これまでと同じ経営会議の延長線上の仕事だろう」と高をくくっていました。けれども、初めて出席した取締役会で、社外取締役から「その判断の根拠と、検討した代替案を教えてください」と静かに問われたとき、自分が背負っている責任の質がそれまでとはまったく違うことに気づかされました。取締役は、会社の指示に従う立場ではなく、会社という法人から経営という事務を託された、独立した判断主体です。この転換は、部長として積み重ねてきた経験だけでは埋まらない空白を伴います。本コースは、私自身が取締役として、また社外取締役として向き合ってきた8年あまりの実務と、大学院で学び直したコーポレートガバナンスの知見をもとに、「役員が個人として何を負い、何を守りとして持てるのか」を8レッスンに整理しました。法令の条文や判例を扱う場面もありますが、目的は暗記ではありません。皆さんが監督する側に回ったとき、迷いなく手を挙げ、率直に問いを発せられるようになることを願っています。」
レッスン一覧
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1
役員とは何か——執行と監督の分離
従業員と取締役の法的地位の違い(雇用契約と委任契約)、執行役員・取締役・監査役・監査等委員の区別、機関設計3形態(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)、モニタリング型ボードとマネジメント型ボード、部長から役員への視座の転換5点を学ぶ
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2
取締役の法的責任①——善管注意義務と忠実義務
会社法330条・355条・356条・362条4項6号・423条・429条、善管注意義務の3側面(意思決定・監視・内部統制構築)、監視義務がほかの取締役の職務執行にも及ぶ理由、忠実義務と利益相反取引・競業避止義務、対会社責任と対第三者責任を学ぶ
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3
取締役の法的責任②——経営判断の原則・株主代表訴訟・D&O保険
経営判断の原則(Business Judgment Rule)と判例における判断枠組み、「守られる判断」にするための5つの手続、株主代表訴訟(847条)の流れ、責任限定契約(427条)、会社補償契約(430条の2)とD&O保険(430条の3)、令和元年改正の経緯を学ぶ
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4
取締役会の実効性——議長の役割と実効性評価
取締役会の価値は決議数ではなく議論の質、議長とCEOの分離統治、議長の5つの仕事、審議時間の配分設計、事前説明(プレブリーフィング)の功罪、取締役会実効性評価の3方式と評価項目の設計・開示を学ぶ
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5
指名委員会・報酬委員会を「運営する側」から
任意の指名委員会・報酬委員会の位置づけ、CEO後継者計画のプロセス設計、内部昇格と外部招聘の判断軸、CEO解任への備え、報酬委員会での議論の中身(水準の妥当性・ピアグループ比較・お手盛り防止)を学ぶ
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6
社外取締役という立場——就任・独立性・対話
社外取締役の要件と独立性基準、就任前デューデリジェンス7項目、就任後のオンボーディング、情報の非対称性の埋め方、詰問にならない質問の作法、エグゼクティブセッション、社内取締役から見た活かし方を学ぶ
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7
有事の取締役会——不祥事・買収提案・危機の意思決定
有事に取締役自身が負う責任、不祥事発覚時の初動、第三者委員会の設置判断、買収提案への応答義務、買収防衛策をめぐる受託者責任、有事における議事録の重要性、平時からの備え5項目を学ぶ
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8
長期視点の意思決定・グループガバナンス・役員のキャリア
四半期業績プレッシャーと長期投資の葛藤、長期視点を制度で担保する4手段、資本配分に取締役として問うべきこと、グループガバナンス、役員のキャリア4方向、役員の孤独と学び続ける仕組みを学ぶ
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総復習テスト
全レッスンの内容を振り返るテスト
このコースの用語集(80語)
- アパマンショップホールディングス株主代表訴訟(あぱまんしょっぷほーるでぃんぐすかぶぬしだいひょうそしょう)
- 最高裁判所が2010年7月15日に判決を下した株主代表訴訟。子会社株式の取得価格の妥当性が争われた事案で、事業再編計画の決定過程と内容に著しく不合理な点がない限り善管注意義務違反に当たらないという、経営判断の原則に関する重要な判断枠組みを示した。
- 委任契約
- ある人が別の人に事務の処理を任せる契約。会社法330条により、株式会社と取締役の関係はこの委任に関する民法の規定に従うとされ、取締役は善管注意義務を負う根拠になる。
- アドバイザリー
- コンサルタントや顧問として複数の企業の経営陣に助言する立場。意思決定の当事者としてではなく、助言者として経営に関わる、役員のキャリアの方向性の1つ。
- エグゼクティブセッション
- 独立社外取締役だけが経営陣抜きで集まり、率直に意見交換をする場。CEOの評価などデリケートな論点を話し合い、議長を通じて経営陣にフィードバックされることが多い。
- お手盛り防止(おてもりぼうし)
- 経営陣が自分自身の報酬や人事を自分たちだけで決めてしまう利益相反を防ぐ発想。報酬委員会に独立社外取締役を過半数配置することなどが具体策になる。
- オンボーディング
- 社外取締役として就任した後、現場往訪や事業説明、前任者からの引き継ぎなどを通じて会社の実情を理解していく過程。