交渉術入門
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コース概要
「値段さえ下げれば合意できる」「相手より優位に立てば勝てる」——交渉に対するこうした思い込みは、しばしば結果を悪くします。交渉とは、利害が一部一致し一部対立する相手との共同意思決定です。テーブルに着く前の準備で結果の大半が決まり、降りられる場所を持つ側が強く、取り分を奪い合う前に取り分の総量を増やせないかを確かめる余地が常にあります。本コースでは、BATNAと留保価格という「降りる基準」の作り方から、立場ではなく利害に注目する原則立脚型交渉、複数の論点を組み合わせて双方の満足度を高める統合的交渉、アンカリングと譲歩の設計、テーブルの上で働く心理的な力学とその対処、そして自分の交渉スタイルの自己診断までを8レッスンで体系的に学びます。価格交渉に限らず、納期・仕様・分担・期限といったあらゆる条件の話し合いに応用できる考え方を扱います。
学習の流れ
レッスン1で交渉の全体像と本コースが扱う範囲を示し、レッスン2でテーブルに着く前の準備の型を学びます。レッスン3とレッスン4は本コースの中核です。レッスン3でBATNAと留保価格という「降りる基準」を、レッスン4で立場と利害を切り分ける原則立脚型交渉の4原則を、厚く扱います。レッスン5〜6は実際のテーブルでの技術で、レッスン5は取り分を増やす統合的交渉、レッスン6は取り分を分け合う分配的交渉のアンカリングと譲歩の設計を学びます。レッスン7ではテーブルの上で働く心理的な力学とその対処を扱い、最終レッスン8で自分の交渉スタイルを自己診断し、繰り返される関係の中で交渉を次につなげる視点でコースを締めくくります。前半(レッスン1〜2)は「考え方の土台」、中盤(レッスン3〜4)は「準備の技術」、後半(レッスン5〜7)は「テーブルの技術」、終盤(レッスン8)は「自分を知り、次へつなげる」という四段構えです。
このコースで学べること
- ✓ 交渉を「勝ち負けを競うもの」ではなく、利害が一部一致し一部対立する相手との共同意思決定として捉え直せる
- ✓ 交渉の準備段階で、自分の利害・相手の利害・論点の重みづけ・時間軸を整理できる
- ✓ BATNAと留保価格を交渉前に数字で設定し、降りられる基準を持って交渉に臨める
- ✓ 立場の裏にある利害を掘り下げる問いかけができ、客観的基準を使って提案を裏づけられる
- ✓ 複数の論点を組み合わせ、取り分の総量を増やす統合的交渉の考え方を実践できる
- ✓ アンカリングのしくみを理解し、先手を打つ場面と、打たれたアンカーに対処する場面を判断できる
- ✓ 交渉の場で使われがちな心理的な揺さぶりを見抜き、誠実さを保ったまま対処できる
- ✓ 自分の交渉スタイルの傾向を把握し、繰り返される関係の中で評判を資産として積み上げる合意の結び方ができる
対象者
業種・職種を問わず、社外の取引先や社内の他部門と条件を詰める場面がある方。営業・調達・企画・人事・総務・情報システムなど、相手と利害が食い違う話し合いに臨むすべての方。値段だけでなく、納期・仕様・分担・期限といったあらゆる条件の交渉を対象とする
講師紹介
江藤 香澄(えとう かすみ)
交渉戦略コンサルタント
大学卒業後、総合商社の資源・原料部門で海外サプライヤーとの長期供給契約交渉を9年担当。価格・数量・改定条項を含む複合条件の交渉を数多く手掛ける。その後、東証プライム上場の素材メーカーに転じ、調達部門で7年、部長として国内外の取引条件交渉にあたる。値上げを要請する側と受ける側の双方を経験し、社内では事業部門と品質部門の板挟みも経験した。2026年現在、独立して業種横断で交渉研修・交渉戦略コンサルティングを担当している
受講される方へのメッセージ
「交渉というと「口がうまい人が勝つもの」というイメージを持たれがちですが、現場で見てきた実感はまったく違います。結果の大半は、テーブルに着く前の準備で決まっています。降りられる場所を先に用意し、相手の利害を推測し、取り分を増やせないかを考える——地味ですが、これが交渉の本体です。本コースでは、総合商社と調達部門の両方で積み重ねてきた実務の感覚を、体系立てて理論とあわせてお伝えします。一緒に「準備で決まる交渉」を身につけていきましょう」
レッスン一覧
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1
交渉とは何か——「勝つ」から「合意を設計する」へ
本コースが扱う範囲を最初に明示したうえで、交渉の定義(利害が一部一致し一部対立する相手との共同意思決定)、分配的交渉と統合的交渉の2類型、固定パイの幻想、ハーバード交渉プロジェクトと『Getting to Yes』の背景、コース全体を貫く6つの中核メッセージを学ぶ
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2
準備が交渉をつくる——テーブルに着く前の5項目
テーブルに着く前に整える準備の5項目(自分の利害の棚卸し・相手の利害の仮説・論点の洗い出しと重みづけ・情報の非対称性の把握・時間軸の設計)と、相手の意思決定構造の見極め方、準備メモの作り方を学ぶ
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3
BATNAと留保価格——降りられる人が強い
BATNA(不調時の最善の代替案)と留保価格の考え方、BATNAを改善する方法、相手のBATNAの推定、ZOPA(合意可能領域)の図解、BATNAを明かすタイミングと隠すタイミングを学ぶ
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4
立場と利害を切り分ける——原則立脚型交渉の4原則
原則立脚型交渉の4原則(人と問題を分ける・立場ではなく利害に注目する・複数の選択肢を発明する・客観的基準を使う)を軸に、立場の裏側を掘る問いかけと、客観的基準の探し方を学ぶ
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5
取り分を増やす——統合的交渉とパイの拡大
複数の論点を同時に扱う統合的交渉の考え方、論点の重みづけの違いを利用した交換、MESO、条件付き合意、第三の案の作り方を学び、取り分の総量を増やす発想を身につける
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6
分配のフェーズ——アンカリングと譲歩の設計
係留と調整ヒューリスティックの理論をもとに、アンカリングが効く条件と防御の3手、譲歩幅を逓減させる譲歩の設計、Win-Winと落としどころの違いを学ぶ
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7
テーブルの上の心理——戦術と、それへの対処
心理的リアクタンス、フット・イン・ザ・ドア、ドア・イン・ザ・フェイスといった戦術のしくみと対処法、勝者の呪い、悪意ある戦術の見抜き方と名指しの作法、交渉における誠実さの下限を学ぶ
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8
交渉スタイルと、次につながる合意
トーマス=キルマンの5スタイルを主張性と協調性の2軸で自己診断し、妥協と統合の違い、評判の資産性、合意直後の確認の作法、交渉の振り返り方を学び、コースの学びを次につなげる
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総復習テスト
全レッスンの内容を振り返るテスト
このコースの用語集(80語)
- 相手の利害の仮説
- テーブルに着く前に、相手が本当に実現したいことについて立てる推測。断定せず、交渉の中で確かめ、修正していく前提で使う。
- アンカリング
- 最初に示された数字や条件が、その後の判断の基準点として働く現象を利用し、自分から先に数字を示す戦略。係留と調整ヒューリスティックを土台にする。
- 意思決定構造
- 交渉相手の組織における、誰が最終的に決めるか・承認ラインはどこか・その人が何で評価されるかという3つの視点の総称。
- ウィリアム・ユーリー(ういりあむ・ゆーりー)
- ハーバード交渉プロジェクトを率いた研究者の1人。ロジャー・フィッシャーと共に『Getting to Yes』を著し、原則立脚型交渉とBATNAという考え方を世に広めた。
- Win-Win
- 双方が自分にとって重要な利害を満たせた状態で合意に至ること。主張の数字を機械的に中間で取る落としどころとは異なる。
- 落としどころ
- 双方の主張の中間あたりで機械的に手を打つ決め方。統合的交渉の工夫を尽くさないまま数字を平均しただけの合意になりやすい。