本文へスキップ
スキルアップカレッジ

経営者の意思決定

経営者・起業家 中級 全8レッスン 約200分

公開日:

コース概要

本コースは、非上場企業のオーナー経営者、つまり「最終決裁者がひとりである会社」の決め方に特化した8レッスンの教材です。既刊の意思決定論の多くは、取締役会・上司・人事部・社外取締役という合議体が組織のどこかにあることを暗黙の前提にしています。しかし、社員数十名から数百名の非上場企業の多くは、株主も代表取締役も個人保証人も同一人物であり、その前提が成立しません。本コースは、この「合議体のない会社」で最終決裁を担う経営者に向けて、可逆と不可逆の決定の分け方、不確実性を量で扱う方法、私財と会社が地続きであることの構造、金融機関や家族との関係が判断の自由度に与える影響、相談相手という装置の設計、決めた後の自分を守る記録と歯止めの仕組みを扱います。

学習の流れ

レッスン1で、最終決裁者がひとりであるという構造そのものを整理し、本コースが扱う範囲と扱わない範囲を明示します。レッスン2・3では、決裁そのものの設計技術として、可逆と不可逆の分類、期待値やデシジョンツリーを使った不確実性の扱い方を学びます。レッスン4・5では、オーナー経営者に固有の重石である個人保証と金融機関との関係が、判断そのものをどう縛るかを扱います。レッスン6では、家族が株主や役員として関与する会社に特有の意思決定の難しさを扱います。レッスン7では、相談相手を自分で設計する具体的な方法を扱い、レッスン8では、決めた後の自分を守るための記録と歯止めの仕組みを扱って本コースを締めくくります。前半で決裁そのものの技術を固め、中盤でオーナー経営者に固有の制約構造を扱い、後半で判断を支える仕組みづくりへと進む設計です。

このコースで学べること

  • ✓ 最終決裁者がひとりである会社の構造的な特徴と、上場企業の意思決定論がそのまま通用しない理由を理解できる
  • ✓ 決定を可逆と不可逆に分類し、それぞれに適した速さと手続きで決裁できる
  • ✓ 期待値・デシジョンツリー・段階投資という道具を使って、不確実な判断を勘だけに頼らず量で扱える
  • ✓ 経営者保証が自分の判断をどう縛っているかを構造として理解し、対処の方向性を持てる
  • ✓ 金融機関との関係が判断の自由度にどう影響するかを理解し、情報開示のタイミングを判断できる
  • ✓ 家族と会社の境界を意識し、家族が関与する意思決定を適切に設計できる
  • ✓ 顧問税理士・顧問弁護士・社外アドバイザリーボードなど、相談相手という装置を自分で設計できる
  • ✓ 意思決定ログと歯止めの仕組みを運用し、決めた後の自分と会社を守れる

対象者

非上場企業のオーナー経営者・創業経営者、家業を継いだ経営者、社外取締役も上司もいない立場で最終決裁を担う方、経営者の意思決定を支える幹部・右腕、経営者を顧客に持つ士業・コンサルタント

講師紹介

来栖 尚子(くるす なおこ)

オーナー経営者向け意思決定アドバイザー/元 BtoB サービス業 創業経営者

大学卒業後、大手メーカーの経営企画部門で8年間、事業計画の策定と投資案件の審査に携わる。2009年、BtoBサービス会社を創業し、非上場のまま15年間経営した(従業員70名、外部資本を入れず、金融機関に個人保証を差し入れたまま経営を継続)。取締役会も社外取締役も持たない体制で、すべての意思決定をひとりで担った経験を持つ。2024年、幹部社員への株式譲渡により経営から退任。現在はオーナー経営者向けに、意思決定の仕組みづくりと社外アドバイザリーボードの設計を支援している。スタンス:「合議体のない会社では、意思決定は能力ではなく仕組みの問題になる」「戻せる決定と戻せない決定を、同じ手間で決めてはいけない」「個人保証は、判断の自由度そのものを縛っている」「相談相手はいるものではなく、自分で設計するもの」「決めないことも決定であり、その代償は必ず誰かが払う」「記録のない判断は、学習に変わらない」

受講される方へのメッセージ

「私は2009年に会社を創業してから2024年に退任するまでの15年間、取締役会も上司も社外取締役も持たずに、すべての意思決定をひとりで下してきました。最初の数年は、それが特別なことだとは思っていませんでした。ですが、同世代の上場企業出身者や大企業の役員と話すたびに、自分の決め方がどれほど検証されていないかに気づかされました。誰も止めてくれません。誰も反対してくれません。判断が正しくても間違っていても、翌月には次の判断が待っています。この構造に気づいてから、私は自分なりに意思決定の仕組みを作り始めました。決裁の権限規程を自分で書き、社外にアドバイザリーボードを作り、意思決定ログをつけ始めました。本コースは、その15年間で作り上げてきた仕組みを、最終決裁者がひとりであるすべての経営者に向けて8レッスンに整理したものです。合議体がないことは弱点ではありません。仕組みで補えます。本コースが、孤独な決裁の質を少しでも上げる助けになれば幸いです。」

レッスン一覧

  1. 1

    最終決裁者がひとりであるという構造

    姉妹コースへの委譲宣言(思考の型・会議の決め方・取締役会の運営や取締役の注意義務・撤退基準と孤独の一般論は既刊コースに譲る)、上場企業の意思決定論がなぜ効かないか(取締役会・上司・人事部・社外取締役という4つの装置が無い)、決裁者がひとりであることの利点と代償、裸の王様化がどう進むかの5段階、本コースの守備範囲、中核メッセージ6個を学ぶ

  2. 2

    決裁を設計する——可逆と不可逆を分ける

    自分の権限規程を自分で書くという発想、戻せる決定と戻せない決定の分類基準(原状回復の費用・時間・信用)、可逆な決定は速く・不可逆な決定は遅く決める原則、即決してよいもの・一晩置くもの・人に当てるものの3レーン、決裁金額のラインの引き方、幹部に渡す決裁と手元に残す決裁、朝令暮改が許される領域と許されない領域を学ぶ

  3. 3

    不確実性を量で扱う——期待値・分岐・段階投資

    「勘」と呼ばれているものの正体、期待値という物差し(簡単な整数で計算する)、デシジョンツリーで分岐を書き出す方法、段階投資という考え方(一度に全額を賭けず小さく試して情報を買う)、ダウンサイドの上限管理、確率を数字にできないときの扱い方を学ぶ

  4. 4

    私財と会社が地続きであること

    経営者保証があると何が判断できなくなるか(設備投資を絞る・撤退を遅らせる・辞められない)、自宅を担保に入れているという事実が心理に効く仕組み、役員報酬を下げて資金を回す判断の落とし穴、会社の借入と個人の生活設計を切り離して考える発想を学ぶ

  5. 5

    金融機関との関係が判断の自由度を決める

    返済計画があることで打てる手が狭まる構造、悪い情報を早く出すか遅く出すかの分岐、金融機関にいつ何をどの順番で伝えるか、業績が落ちた局面で最初に相談する相手、決算数字が意思決定の材料ではなく交渉材料になってしまう問題を学ぶ

  6. 6

    家族と会社の境界

    配偶者・親族が株主・役員・社員であるときの決定、家庭で話せることと話せないこと、生活資金と事業資金の分離、家族が反対する決定をどう進めるか、承継や引退が視野に入ったときの判断のゆがみ、家族会議という装置の作り方を学ぶ

  7. 7

    相談相手を設計する

    「専門家に相談しましょう」で止まらないための具体論、顧問税理士・顧問弁護士を作業者から相談相手に変える方法、疑似取締役会・社外アドバイザリーボードの作り方、社外の同格者を持つ意味、有償の壁打ちという選択、社内の右腕に何を相談してよいかを学ぶ

  8. 8

    決めた後の自分を守る——記録・帯域・歯止め

    意思決定ログの付け方と後知恵バイアス対策、四半期に一度自分の判断を答え合わせする習慣、決断疲れと意思決定の帯域管理、ワンマン化の自己診断チェックリストと歯止めの設計、経営理念を判断基準として運用する方法、修了後の情報源を学ぶ

  9. ✓

    総復習テスト

    全レッスンの内容を振り返るテスト

このコースの用語集(103語)
イエスマン
上司や社長の意見に賛同し続けることで評価を得ていく人材。合議体を持たない会社では、率直な意見を言う人材ほど社内の中枢から外れやすく、イエスマンが台頭しやすい構造が生まれる。
一括返済
借入の残額を、分割ではなく一度にまとめて返済すること。事業からの撤退時に必要になることが多く、手元資金を大きく減らす要因になる。
一方通行のドア
一度通ると後戻りができない決定を表す比喩。両方向に通り直せる「両方向のドア」と対比され、原状回復の費用・時間・信用への影響という3つの基準で不可逆かどうかを判定する考え方の土台になる。
意思決定ログ
重要な判断を下すたびに、決めた日・前提・想定・判断理由の4項目を書き残しておく記録。後知恵バイアスへの対策として機能する。
運転資金
仕入れ、人件費、家賃など、日々の事業活動を継続するために必要な資金。手元資金が乏しいと、判断の自由度そのものが狭まる。
オーナー経営者(おーなーけいえいしゃ)
株式の過半数を自分または家族で保有し、経営と所有が一致している経営者。本コースが対象とする、最終決裁者がひとりである会社の経営者を指す。