社内ポータルの情報設計
レッスン4:社内ポータルの情報設計
このレッスンで学ぶこと
- 「探せない情報は無いのと同じ」という発想の意味を理解する
- 情報の分類とナビゲーション設計の考え方を、図で捉える
- 検索性を高める工夫と、更新のガバナンス(誰が消すか)を扱う
- 増えすぎたページを整理する基準を持つ
前回のレッスンでは、社内報・社内メディアの編集設計を扱いました。社内報が「語り直す場」だとすれば、社内ポータルは「必要な情報を探しに行く場」です。今回は、この探しに行く場をどう設計するかを扱います。
探せない情報は無いのと同じ
社内ポータルには、規程集、申請フォーム、各種お知らせ、会議資料など、膨大な情報が蓄積されていきます。多くの会社では、情報そのものは存在しているのに、社員がそこにたどり着けないという問題が起きています。
情報が存在することと、情報が使えることは別の話です。どれほど正確で有用な情報がポータルに置かれていても、社員がそれを見つけられなければ、業務の役には立ちません。「探せない情報は無いのと同じ」という発想は、この単純だが見落とされがちな事実を言い表しています。
社内報が「意味を語り直す場」であるのに対し、社内ポータルは「必要なときに正確な情報へたどり着ける場」であるべきです。両者は役割が異なるため、設計の考え方も異なります。社内報は読み物として編集する視点が中心になりますが、社内ポータルは、情報をどう分類し、どう並べ、どう検索できるようにするかという、構造の設計が中心になります。
💡 ポイント 「チャネルを増やすほど、届かなくなることがある」という本コースの中核メッセージは、社内ポータルの設計にもそのまま当てはまります。情報を置く場所を増やせば増やすほど、社員は「どこを見ればよいか」がわからなくなり、結果として探すこと自体をあきらめてしまいます。
情報の分類とナビゲーション設計
社内ポータルの使いやすさは、情報がどう分類され、どうたどり着けるように配置されているかで大きく変わります。分類の軸には、いくつかの考え方があります。
分類軸 1:部門別
営業部門のページ、製造部門のページ、というように、組織の構造に沿って情報を分類する軸です。部門特有の情報を探すときにはわかりやすい一方、複数部門にまたがる情報がどこに置かれるべきか、迷いが生じやすい軸でもあります。
分類軸 2:目的別
「申請する」「調べる」「相談する」というように、社員が何をしたいかという目的に沿って情報を分類する軸です。組織構造を知らない新入社員でも、目的から情報にたどり着きやすいという利点があります。
分類軸 3:ライフサイクル別
入社時に必要な情報、異動時に必要な情報、退職時に必要な情報というように、社員の在籍期間の中での出来事に沿って情報を分類する軸です。特定のタイミングでしか使わない情報を、迷わず見つけられるようにする効果があります。
どの軸も一長一短があり、1 つの軸だけで完璧な分類を作ることはできません。実務では、主となる軸を 1 つ決めた上で、検索やタグ付けでほかの軸からもたどり着けるようにする、という組み合わせが現実的です。
3 つの分類軸の特徴を、あらためて比較しておきます。
| 分類軸 | 向いている場面 | 弱点 |
|---|---|---|
| 部門別 | 特定部門の業務に関する情報を探すとき | 複数部門にまたがる情報の置き場所に迷う |
| 目的別 | 組織構造を知らない社員が目的から探すとき | 目的の切り分け方が曖昧だと、かえって迷いやすい |
| ライフサイクル別 | 入社・異動・退職など特定の時期の情報を探すとき | 日常的に使う情報の分類には向かない |
表 1:情報の分類軸の比較。1 つの軸を万能に扱おうとせず、主軸と補助軸を組み合わせる発想が実務的です。
次の図は、部門別の分類を主軸にしつつ、目的別のページも用意した、社内ポータルの情報構造の例です。
flowchart TD
Top[トップページ] --> Dept[部門別ページ]
Top --> Purpose[目的別ページ]
Top --> News[お知らせ]
Top --> FAQ[よくある質問]
Dept --> Sales[営業部門]
Dept --> Factory[製造部門]
Dept --> Corp[管理部門]
Purpose --> Apply[申請する]
Purpose --> Search[調べる]
Purpose --> Ask[相談する]
Apply --> Expense[経費精算の申請]
Apply --> Leave[休暇の申請]
Search --> Rule[規程を調べる]
Ask --> Helpdesk[問い合わせ窓口]
図 1:社内ポータルの情報構造の例。トップページから、部門別・目的別という 2 つの主要な経路と、お知らせ・よくある質問という補助的な経路に分岐しています。どの入口から入っても、必要な情報にたどり着ける設計が理想です。
図が示すように、トップページから複数の主要な経路が伸び、それぞれがさらに分岐していく構造は、ツリー構造と呼ばれます。ツリーが深くなりすぎると、目的の情報にたどり着くまでに何度もクリックが必要になり、途中で探すのをあきらめる社員が出てきます。目安として、トップページから 3 段階前後で目的の情報にたどり着ける設計を意識すると、使いやすさが保たれます。
📝 補足 分類の軸を決める作業は、一度決めたら終わりではありません。組織が変わったり、新しい制度ができたりするたびに、既存の分類に当てはまらない情報が出てきます。分類そのものを定期的に見直す前提で設計しておくことが実務的です。
検索性を高める工夫
分類とナビゲーションを整えても、社員が求める情報にすぐたどり着けるとは限りません。検索性を高めるための工夫を整理します。
タイトルの付け方を統一する
ページのタイトルが担当者ごとにばらばらだと、検索してもヒットしにくくなります。「〇〇制度について」「〇〇の申請方法」というように、タイトルの型を統一しておくと、検索結果に一貫性が生まれます。
社員が実際に使う言葉でタイトルを付ける
制度の正式名称と、社員が普段使う呼び方が違うことはよくあります。正式名称だけをタイトルにすると、社員が検索したときにヒットしません。正式名称と普段の呼び方の両方をタイトルや説明文に含めておくと、検索に強くなります。
タグやキーワードを付与する
ページに関連するキーワードをタグとして付与しておくと、分類上は離れた場所にあるページ同士も、検索やタグ一覧からたどり着けるようになります。
更新日を明記する
情報がいつ更新されたかがわからないと、社員はその情報を信じてよいか判断できません。更新日を明記することは、検索性というより信頼性の問題ですが、探し当てた情報を安心して使えるかどうかに直結します。
パンくずリストと関連ページの表示
今、自分がポータル全体のどこにいるのかを示す経路表示(パンくずリスト)を各ページに付けておくと、検索から直接たどり着いた社員でも、上位の分類や関連する情報に迷わず移動できます。あわせて、そのページに関連するほかのページへのリンクを本文の末尾に表示しておくと、1 つの情報を探しに来た社員が、関連する情報にも自然にたどり着けます。
よく検索されるキーワードを分析する
検索窓を設置している場合、社員が実際にどんな言葉で検索しているかを定期的に確認します。検索してもヒットしない言葉が多いキーワードが見つかれば、そのキーワードに対応するページのタイトルや説明文を見直す手がかりになります。社員の言葉と、ポータル側の言葉のずれを埋め続ける作業です。
⚠️ 注意 検索性を高める工夫は、担当者が個別に頑張るだけでは長続きしません。タイトルの型やタグの付け方についての簡単なルールを決め、ポータルに情報を追加するすべての人がそのルールに従うようにすることが、継続的な検索性の維持につながります。
更新のガバナンス——誰が消すか
社内ポータルの情報設計で見落とされがちなのが、情報を「消す」仕組みです。多くの会社では、情報を追加する仕組みは整っていても、古くなった情報を消す仕組みが整っていません。
誰が作るかは決まっているが、誰が消すかは決まっていない
新しいページを作る際には、担当者や承認者が明確なことが多いですが、そのページが不要になったときに誰が削除やアーカイブを判断するのかは、決められていないことがほとんどです。結果として、古い情報がいつまでも残り続け、社員が誤って古い情報を参照してしまう原因になります。
オーナー制の導入
各ページやカテゴリに「オーナー」を明確に割り当てる仕組みが有効です。オーナーは、そのページの内容が最新かどうかを定期的に確認し、不要になれば削除やアーカイブを判断する責任を持ちます。オーナーが不在のまま放置されたページは、情報の鮮度が急速に落ちていきます。
定期棚卸しのサイクル
半年に一度、あるいは年に一度など、決まった周期でポータル全体を棚卸しする機会を設けます。アクセスがほとんどないページ、更新日が極端に古いページを洗い出し、削除するか、内容を更新するかを判断します。
役割を一覧にしておくと、誰が何を担うのかが曖昧になりません。
| 役割 | 主な責任 | 判断のタイミング |
|---|---|---|
| ページオーナー | 内容の正確性の維持、更新可否の一次判断 | 内容に変更が生じたとき |
| ポータル運営担当 | 全体の分類ルールの維持、棚卸しの実施 | 定期棚卸しのサイクルごと |
| 各部門の情報発信責任者 | 自部門に関する情報の網羅性の確認 | 組織変更や新制度の導入時 |
表 2:社内ポータル運用の役割分担の例。オーナーが個々のページを見て、運営担当が全体の構造を見るという、二段構えの体制が実務的です。
🔰 初学者の方へ 「情報を消す」というと、消極的な作業に感じるかもしれません。しかし、古い情報を残したまま新しい情報を追加し続けると、正しい情報と古い情報が混在し、ポータル全体への信頼が下がっていきます。消す作業は、ポータルの信頼性を保つための積極的な作業です。
ページのライフサイクルを設計する
オーナー制と定期棚卸しを機能させるには、1 つのページが作られてから役目を終えるまでの流れを、あらかじめ型として決めておくと運用しやすくなります。
flowchart LR
Create[作成] --> Publish[公開]
Publish --> Review[定期レビュー]
Review -->|最新である| Publish
Review -->|古くなった| Update[更新]
Review -->|不要になった| Archive[アーカイブ]
Update --> Publish
図 2:社内ポータルのページのライフサイクル。作成して公開したら終わりではなく、定期レビューを経て、更新するか、アーカイブするかを判断し続ける流れが繰り返されます。この流れを型として共有しておくと、オーナーごとに判断がばらつくことを防げます。
新入社員が最初につまずくポイント
社内ポータルの使いやすさをもっとも敏感に感じ取るのは、まだ社内の慣習を知らない新入社員です。新入社員の視点に立つと、設計上の欠陥が見えやすくなります。
新入社員がつまずきやすいのは、社内で当たり前に使われている略称や通称が、ポータル上の正式名称と一致しないケースです。先輩社員に口頭で聞けばわかることでも、ポータルだけを頼りに探そうとすると、たどり着けないことがあります。前述したタイトルの付け方の工夫は、こうした新入社員のつまずきを減らす効果もあります。
また、新入社員は、どの情報が「まず読むべきもの」で、どの情報が「必要になったときに探せばよいもの」なのか、優先順位がわかりません。入社時に必要な情報だけをまとめた入口ページを用意しておくと、情報の海に投げ出されたような戸惑いを減らせます。
📝 補足 新入社員向けの入口ページは、作った後も定期的に見直す必要があります。制度や組織が変わるたびに、入口ページの内容も古くなっていくためです。
増えすぎたページの整理
ポータルの運用を続けていると、似たような内容のページが複数存在したり、誰も見なくなったページが積み重なったりする状態が起こります。整理の基準を持っておくことが必要です。
重複統合の基準
内容が重なるページが複数見つかった場合は、もっとも更新が新しく、もっとも参照されているページに情報を統合し、ほかのページはそこへの案内に置き換えます。同じ内容が複数の場所に存在すると、どちらが最新かわからなくなり、社員の混乱を招きます。
アーカイブの基準
現在は使われていないが、過去の記録として残しておく価値のある情報は、通常のナビゲーションからは外し、アーカイブ用の領域に移します。削除してしまうと後から必要になったときに困りますが、通常の検索や分類には表示させないことで、現役の情報との混在を防げます。
老朽化コンテンツの扱い
更新されないまま長期間放置されているページは、内容が古くなっている可能性が高いものです。定期棚卸しの際に、更新するか、アーカイブするか、削除するかを必ず判断し、放置したままにしないことが重要です。
例えば、ある制度について「申請方法のページ」「よくある質問のページ」「過去の説明資料のページ」が、それぞれ別の担当者によって別々の時期に作られ、内容が少しずつ食い違っているという状態は、多くの会社で見られます。棚卸しの際には、こうした複数ページを 1 つのオーナーの管理下にまとめ、最新の情報を 1 か所に集約した上で、ほかのページからはそこへのリンクだけを残す形に整理します。情報を減らすことが目的ではなく、正しい情報の置き場所を 1 つに定めることが目的です。
📖 もっと詳しく 増えすぎたページの整理は、一度に大掛かりに行おうとすると負担が大きく、後回しにされがちです。定期棚卸しのサイクルの中に、少しずつ整理する作業を組み込んでおくと、負担を分散できます。
まとめ
このレッスンでは、以下のことを学びました。
- 情報が存在することと、情報が使えることは別であり、「探せない情報は無いのと同じ」
- 情報の分類軸には部門別・目的別・ライフサイクル別があり、主軸を決めた上で検索やタグで補完する
- 検索性は、タイトルの統一、社員が使う言葉の反映、タグ付け、更新日の明記で高められる
- 更新のガバナンスでは、誰が消すかを決めることが重要で、オーナー制と定期棚卸しが有効
- 増えすぎたページは、重複統合・アーカイブ・老朽化コンテンツの判断という基準で整理する
次のレッスンでは、発信の場から対話の場へと視点を移し、全社集会・タウンホールの設計を扱います。
確認クイズ
このレッスンの理解度をチェックしましょう。