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スキルアップカレッジ

派遣法・偽装請負・同一労働同一賃金・副業労務

レッスン6:派遣法・偽装請負・同一労働同一賃金・副業労務

このレッスンで学ぶこと

  • 派遣法(1985 制定・2020 改正)と派遣可能業務・派遣期間 3 年ルールを扱う
  • 偽装請負 4 判断基準と請負適法性の判定を理解する
  • 同一労働同一賃金の 3 大最高裁判例(ハマキョウレックス・大阪医科薬科大学・メトロコマース)を掴む
  • 副業・複業の労務管理(労働時間通算・健康管理・労災)を扱う

前回のレッスンでは、労災対応・メンタル休復職の会社側運用を扱いました。今回は、非正規雇用と副業に関する労務管理の 4 大領域を扱います。

派遣法(1985 制定・2020 改正)

派遣法の歴史

労働者派遣法は 1985 年制定、以下の主要改正を経て現行制度に至ります:

  • 1985 制定:ソフトウェア開発など 13 業務限定
  • 1996 改正:26 業務に拡大
  • 1999 改正:ネガティブリスト方式化(禁止業務以外は原則自由)
  • 2003 改正:製造業への解禁
  • 2015 改正:派遣期間ルールの一本化(3 年ルール)
  • 2020 改正:同一労働同一賃金対応

派遣可能業務

派遣禁止業務:港湾運送・建設・警備・医療(一部除く) の 4 業務。それ以外は原則派遣可能。

派遣可能業務は「事業所単位」「個人単位」の 2 つの期間制限:

  • 事業所単位:同一事業所で派遣を受け入れる期間は原則 3 年、過半数労働組合等の意見聴取で延長可
  • 個人単位:同一組織単位(部・課)で同一派遣労働者を受け入れる期間は 3 年上限、延長不可

派遣元・派遣先の義務

労働者派遣契約の必須記載事項(労働者派遣法 26 条):

  • 派遣労働者の業務内容
  • 派遣先の事業所名・所在地
  • 派遣期間
  • 派遣就業日と就業時間
  • 派遣料金
  • 派遣元・派遣先の責任者
  • 苦情処理の方法

派遣元事業主の義務

  • 派遣労働者の雇用管理(社会保険・雇用保険)
  • 派遣労働者への教育訓練(キャリアアップ措置)
  • 同一労働同一賃金対応(均等均衡待遇 or 労使協定方式)

派遣先の義務

  • 派遣労働者の指揮命令
  • 派遣就業状況の派遣元への報告
  • 苦情処理体制の整備
  • 派遣先均等均衡待遇の情報提供

偽装請負 4 判断基準

偽装請負とは、形式上は「業務請負」でありながら、実態は「労働者派遣」となっているケース。労働者派遣法違反・職業安定法違反となり、派遣元・派遣先ともに罰則対象。

厚労省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(1986 年告示・37 号告示)に基づく 4 判断基準:

1. 指揮命令関係

請負なら受注業者(請負元)が指揮命令、派遣なら派遣先が指揮命令。発注者が受注業者の労働者に直接指示・作業指導・服装指示・出退勤指示をすれば偽装請負の疑い。

2. 独立性

受注業者が自己の企業組織で業務遂行しているか。受注業者の管理職・スタッフ・機械設備が独立して業務遂行していれば請負、発注者の管理下で作業していれば派遣。

3. 資金の自己調達

受注業者が事業として独立採算で業務遂行しているか。受注業者が労働者の賃金・機械設備・材料を自己負担していれば請負、発注者が負担していれば派遣の疑い。

4. 技能と経験

受注業者の労働者が独立した技能・経験で業務遂行しているか。単純作業員を発注者の指揮命令で使うだけなら派遣の疑い。

偽装請負の 3 判定パターン

  • 常駐型 SE:発注者の事業所に常駐し、発注者の指示で作業→偽装請負リスク大
  • 業務委託契約下の事務員:発注者の管理職から日常業務指示→偽装請負リスク大
  • 建設下請の重層構造:元請→一次下請→二次下請の労働者を元請が指揮命令→偽装請負リスク

偽装請負を回避するには、契約書上で「請負」と明記するだけでは不十分。実態として上記 4 基準を満たす必要があります。

同一労働同一賃金の 3 法

パートタイム・有期雇用労働法(2020/4 大企業・2021/4 中小企業)と 労働者派遣法(2020/4)で、正社員と非正規(パート・有期雇用・派遣)の不合理な待遇差を禁止。

ガイドライン(厚労省 2018 告示)

同一労働同一賃金ガイドラインは、賃金・賞与・退職金・各種手当・福利厚生・教育訓練の 6 領域別に判断枠組みを示します。

待遇差の判定 6 手当

以下の 6 手当について、正社員と非正規で不合理な差があるかを判定:

  • 通勤手当:業務の実態から差の合理性判定困難、原則同一支給
  • 皆勤手当:出勤への貢献に対する手当、業務が同じなら差なし
  • 食事手当:昼食代の一部補助、業務時間帯が同じなら差なし
  • 住宅手当:異動範囲の広さで差の合理性判定可能(正社員は全国転勤・非正規は地域限定なら差合理)
  • 家族手当:扶養家族への支援、長期継続勤務者への処遇の差として合理性判定可能
  • 退職金・賞与:将来の貢献期待・過去の貢献評価・勤続への報奨、正社員と非正規の位置付けの差から合理性判定

3 大最高裁判例

ハマキョウレックス事件 最判 2018/6/1

物流企業の有期契約労働者が、正社員との手当差の不合理性を争った事案。無事故手当・作業手当・給食手当・皆勤手当の 4 手当は不合理と判断、住宅手当は合理と判断。期限のない雇用と期限のある雇用の間の待遇差は、業務内容・責任範囲・配置転換範囲を基準に判断する枠組みを確立。

大阪医科薬科大学事件 最判 2020/10/13

大学の非常勤教員・アルバイト職員が、賞与・退職金の支給を求めた事案。賞与・退職金の不支給は不合理でない と判断。長期継続勤務のインセンティブ・組織貢献の期待といった目的の相違を認めた。

メトロコマース事件 最判 2020/10/13

売店の契約社員が、退職金の支給を求めた事案。退職金の不支給は不合理でない と判断。同日の大阪医科薬科大学事件と併せ、賞与・退職金については使用者の裁量が広く認められることが示されました。

日本郵便事件 3 件 最判 2020/10/15

日本郵便の期間雇用社員が、扶養手当・年末年始勤務手当・夏期冬期休暇・病気休暇の待遇差を争った事案。扶養手当・年末年始勤務手当・夏期冬期休暇・病気休暇の待遇差は不合理と判断。手当ごとに個別判断する枠組みが実務に定着。

副業・複業の労務管理

2018 年厚労省「モデル就業規則」改定で副業禁止規定が削除されて以降、副業解禁が急速に進行。労務管理の 4 論点:

1. 労働時間通算

労働基準法 38 条 1 項に基づき、複数の事業場で労働する場合の労働時間は通算されます。副業をする労働者は本業と副業を合算した労働時間を管理する必要。

通算のルール(労働時間通算のガイドライン 2020/9 改定):

  • 労働者の申告により本業側が把握
  • 副業先の労働時間は本業側の労働時間に加算
  • 割増賃金の支払義務は「後から労働契約を締結した使用者」に発生(原則)
  • 月 45 h /年 720 h の上限規制は事業場ごとに判断

2. 健康管理

副業により総労働時間が長時間化するリスクがあります。会社は本業労働者の健康確保措置(月 80 h /100 h 超の医師面接指導)を副業労働時間も加味して実施することが求められます。

3. 労災

副業先での労災は、副業先の労働時間・給与を基礎に労災給付が計算されます。副業の労災特別加入(フリーランスの場合)・副業先の労災保険加入状況の把握が必要。

副業労働時間中の移動時間中の事故は、通勤災害の判定が複雑化。副業前後の移動は本業から見て通勤とは言えず、副業単独の通勤災害となる可能性。

4. 情報漏洩・競業避止

副業先が競合企業でないか、機密情報の漏洩リスクはないかを判定するため、副業の届出制・許可制が実務ボリューム帯。副業規程 で「原則届出・許可・例外禁止事由(競業・機密漏洩・本業への影響)」を明文化。

副業労務の実務 5 ステップ

  1. 副業希望労働者からの届出(副業先・業務内容・労働時間)
  2. 会社側の許可判断(競業・機密・本業への影響のチェック)
  3. 労働時間通算のルール確認(本業・副業側の労働時間集計)
  4. 健康管理措置(総労働時間モニタリング)
  5. 労災・社会保険の運用確認

講師の現場メモ

私が労務部長時代に対応した偽装請負案件で、システム開発の受注業者の SE が発注者の事業所に常駐し、発注者の課長から日常業務指示を受けていた事案がありました。労働局から是正指導を受け、契約を派遣契約に切り替えざるを得なかった苦い経験があります。

契約書上「請負」と明記しても、現場実態が判断基準を満たさなければ意味がありません。私はこの経験から、契約締結前に必ず「発注者からの指揮命令の有無」「受注業者の独立性」「資金の自己調達」「技能経験の独立性」の 4 基準を現場ヒアリングで確認するようにしました。

まとめ

  • 派遣法 1985 制定・2020 改正(同一労働同一賃金対応)。派遣禁止業務 4 業務(港湾運送・建設・警備・医療 一部除く)。それ以外は原則派遣可能
  • 派遣期間 2 制限:事業所単位(原則 3 年・過半数組合等意見聴取で延長可)/個人単位(同一組織単位で 3 年上限・延長不可)
  • 労働者派遣契約 必須記載事項 労働者派遣法 26 条:業務内容・派遣先事業所名所在地・派遣期間・就業日就業時間・派遣料金・派遣元派遣先責任者・苦情処理方法
  • 偽装請負 4 判断基準(厚労省 1986 年告示 37 号):指揮命令関係/独立性/資金の自己調達/技能と経験。契約書上「請負」明記だけでは不十分、実態として 4 基準を満たす必要
  • 偽装請負 3 判定パターン:常駐型 SE /業務委託契約下の事務員/建設下請の重層構造
  • 同一労働同一賃金 3 法:パートタイム・有期雇用労働法(2020/4 大企業・2021/4 中小)/労働者派遣法(2020/4)/同一労働同一賃金ガイドライン(2018 告示)
  • 待遇差の判定 6 手当:通勤手当(原則同一支給)/皆勤手当/食事手当/住宅手当(異動範囲差で合理性判定可)/家族手当/退職金賞与(使用者裁量広く認められる)
  • 3 大最高裁判例:ハマキョウレックス 2018/6/1(4 手当不合理・住宅手当合理)/大阪医科薬科大学 2020/10/13(賞与退職金不支給合理)/メトロコマース 2020/10/13(退職金不支給合理)/日本郵便 2020/10/15(扶養手当・年末年始勤務手当・夏期冬期休暇・病気休暇の待遇差不合理)
  • 副業・複業の労務管理 4 論点:労働時間通算(労基法 38 条 1 項・労働者申告・後から労働契約締結した使用者に割増賃金義務)/健康管理(総労働時間モニタリング)/労災(副業先の労働時間給与基礎・副業単独通勤災害)/情報漏洩・競業避止(副業規程で届出許可・原則届出・例外禁止事由)
  • 副業労務 5 ステップ:届出(副業先・業務内容・労働時間)/許可判断(競業・機密・本業影響)/労働時間通算ルール確認/健康管理措置/労災社会保険運用確認

次のレッスンでは、改正育介法・障害者雇用・高年齢者雇用・LGBT 対応を扱います。


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